翻訳の仕事は5年前(2001年)からしています。子供の頃から漫画が好きで、漫画の翻訳者になりたいとずっと思っていました。日本語は大学で勉強したのですが、4年生の時に、出版社に勤めていた友達が、翻訳のアルバイトを紹介してくれたんです。それが最初のきっかけとなって、今も続けています。その時に初めて訳した漫画が「ポケットモンスター
PiPiPi★アドベンチャー」。通常の翻訳者が休暇だった為、代理で頼まれたものでした。現在は出版社3社と仕事をしています。
ドラゴンボール改訂版
|
|
|
ドラゴンボールのマンガがずらり。左にあるのはNaruto(全て日本語)
|
「ドラゴンボール」は、作品としては既に一度翻訳出版されていて、私の翻訳は改訂版です。最初のドラゴンボールが翻訳された頃は、まだ日本漫画の市場がフランスにほとんどなく、漫画や日本に対する知識がフランスの人に今ほどなかった為、いかにフランスの人が読みやすいか、分かりやすいか、をベースに翻訳がされていました。その為、文中の単語や名称も、フランス風にアレンジされていることが多かったんです。でも、徐々に漫画が広まり、昔に比べて漫画や日本に対して知識を持っている人も増え、ファンの人も昔の訳では満足できなくなってきて、「より原作に近いものを味わいたい」という要望もあったため、改訂版を出すことになりました。今、改訂版は26巻まで出ていますが、できるだけ日本のオリジナルの単語を残しながら、訳をするようにしています。
亀仙人は「天才亀」?!
|
|
|
フェドウアさんの仕事部屋。壁には一面ドラゴンボールのポスター。
|
訳の具体例を挙げるとすると、例えば昔の訳では、孫悟空は「サンゴクウ」、クリリンは「クリラン」、亀仙人は「トルチュ・ジェニアル(直訳「天才亀」)」、如意棒も「バトン・マジ(直訳「魔法棒」)」、筋斗雲は「ニュアージュ・シューペール・ソニック(直訳「スーパー音速雲」)」となっていました。でも、改訂版では、これらの名前も全てそのままアルファベット表記にし、「如意棒」や「筋斗雲」など、そのままではフランス人に分かりづらい名前に関しては、コマの下に米印で注釈を入れるようにしています。(ちなみに「カメハメ波」などの技名はそのまま使用。)
訳し方は翻訳者が決めるので、道具や人物名、必殺技を「フランス語」に訳す人もいますが、私は基本的には日本語の単語をアルファベット表記でそのまま使い、必要な時に注釈を入れる形を取っています。日本語をそのまま使った方が、よりオリジナルに近い形になり、その分、日本に触れる機会が増え、読む人が日本を知るきっかけになる、と考えているからです。
ダジャレやギャグは翻訳者泣かせ
 |
|
今回インタビューに答えてもらったフェドゥアさん
|
ギャグに関しては、日本語をそのまま訳しただけでは意味が通じないし、面白くないので、そういう時は、フランス語でいかに面白くするか、を考えます。例えばドラゴンボールに出てくる界王さまはダジャレを連発するので、訳を考えるのが大変でした(苦笑)。「フトンが吹っ飛んだ」というダジャレは、「Futon
est fute(フトン・エ・フュテ→直訳:フトンは悪賢い)」という風にしたり、「電話が出んわ」というダジャレは、フランス語で「電話」を使っている諺をもじって使ったりしました。
また、作中でよく見られる言葉遊びなどは、例えばギニュー特戦隊を例にすると、ギニューは「ginyu」と訳し、「牛乳」と注釈を付け、ヨーグルトをもじったグルドは「グルド(日本名)→yoghourt→Ghourd(フランス名)」、チーズをもじったジースは「ジース(日本名)→cheese→Jeese(フランス名)」として、綴りで言葉遊びが分かるようにしました。(ちなみに、改訂前の訳では、ギニュー→Ginue、グルド→Guldo、ジース→Jeece、となっており、日本語の発音をフランス語風の綴りにしたもの。訳はちゃんとされているが、言葉遊びの部分はやや弱い。)でも、ダジャレやギャグの訳は本当に難しく、毎回苦労しています(苦笑)。
日本語のオノマトペを意味を持っている
オノマトペ(擬音語・擬態語)に関しては、場面を見て、フランス語でも同じものを表す音があれば、その訳を入れます。例えば胸の「ドキドキ」は「Don
Don」とか。ただ、フランスではオノマトペは単なる「音」にすぎないのですが、日本語のオノマトペは意味を持っていて、それによって場面の状況説明をしている時があるので、そういう時は音を単に訳するのではなく、状況を説明できる単語に置き換えたりします。例えば「しーん」→「Silence(静)」、「じたばた」→「Panic(パニック)」などです。あと、登場人物が方言、例えば大阪弁を話す場合は、訳にスラングを入れたり、マルセイユ風にしてみたり、東北弁の時は地方の人がよく使う単語を入れたりなど、違いが出るようにしています。
インターネットは必須アイテム
 |
|
翻訳に辞書は欠かせません!広辞苑も使います。
|
漫画1冊を訳すのに掛かる時間は、少年漫画で約1週間、少女マンガで2週間くらいです。少年マンガはアクションシーンなど、ほとんど台詞がなかったりすると、早いです(笑)。少女マンガは心理描写や台詞が多く、やはり時間が多めに掛かりますね。訳してて楽しいのは少年漫画のほう。自分が冒険もののストーリーが好きなので。
仕事の必須アイテムは、シャープの電子辞書、広辞苑、和仏辞書、そしてインターネット。今「+Anima」も訳しているのですが、登場人物の名前がアイヌ語だったので、全部インターネットで意味を調べました。
好きなマンガはドラゴンボール!それから、ベルセルク、幽々白書、最遊記など、他にもいっぱい(笑)。訳する作品は出版社から指定されるものなので、自分では選べませんが、今でも十分好きなマンガを訳させてもらっています。でも、もし機会があればデスノートを訳してみたいです!
フェドゥア・タラル
(これまでに訳した作品)「BLACKCAT」「 彼氏彼女の事情」「紅茶王子」「 ゴッドチャイルド」「 ハッピーマニア」「フルムーンをさがして」
(現在訳している作品)「 ドラゴンボール(改訂版)」「RAVE」「花ざかりの君たちへ」「グラビテーション」「+Anima」「ドラゴンクエスト
ダイの大冒険」 |