海賊版商品販売
前回のレポートに引き続き、海賊版商品についてアルバム・マンガ店のダニエルにインタビューを行った。彼によると、海賊版の販売は以前は多くの店が行っていたが、現在はフランスの版権社のチェックが厳しく直ぐに訴訟を起こすため(特にDVDなど)、やめている所が多いとのこと。(とは言っても、続けている所はまだ存在するらしいが。)
正規品との販売価格を比べると、例えばDVDで、正規の日本製の仕入れが43Eurで小売値が65Eurだとすると、海賊版の仕入れは6Eurで売り値は24Eur。この価格差は、店側にとっても客側にとっても大きい。
(ちなみに上記の正規品とは、新作のDVDでフランスにまだ版権者がない時に商品を日本から輸入した場合のもの。)
版権者を通したフランスでの正規商品は出てくるまでに時間が掛かるが、海賊版は新しい作品がすぐ出てくるので、それも海賊版に手を出す要因の一因であるらしい。ただ現在は、フランスの版権者が版権確保後、製造前にすぐに海賊版のチェックを行い始めているので、それも減ると予測される。
さらに、DVDの日本直輸入正規商品は日本語音声のみだが、海賊版は英語吹き替えか英語字幕が付いている。価格だけでなく、この英語版が、海賊版の売れている理由でもある。音声が日本語のみの場合のDVDの売り上げを仮に1とした場合、英語版は3、仏語版は10の比率で売れる。尚、コアのファンは音声は日本語で字幕に仏語が出るのを一番望む。
海賊版は台湾か香港製のものがほとんどで、ベトナムやタイは製造技術の関係か音楽CDのみでDVDは現在はまだないらしい。商品の質としては、音楽CDの場合は表紙の作りが多少悪い程度で再生音質は変わらない。DVDも同様で、カバーの印刷の質は落ちるが再生画像は正規品とさほど変わらないという。尚、輸入通関のコピー商品検閲は書類検査のみで商品チェックは今まで無かったという。
海賊版に対しては、仏語版の正規商品の発売と日本での発売の時間差をなるべくなくす、また、日本正規製品に最初から英語の字幕(吹き替えは費用が高いので字幕で十分)を入れるようにする、などの対策が考えられる。
海賊版商品実態調査(パリ13区、地下鉄Porte d'ivry周辺)
パリ13区の中華街にあるOLYMPIADESショッピングセンターの中に、CDやDVDの海賊版商品の小売、卸をやっている店舗が多く集まっていると聞き視察を行った。
結果としては、7店舗の音楽CD、DVDの販売店があったが、そのうち2店舗が日本のアニメDVDやCDを扱っていた。他店はベトナムや台湾の音楽CD、DVDのみ。
同センター内の販売価格は殆ど同じなので、以下にその販売価格を参考に記載する。
・台湾の映画(台湾製)のビデオテープ→1本5Eur
・ベトナム、台湾の映画(ベトナム、台湾製)のDVD→5〜8Eur
・中国語の音楽CD→5〜7Eur、中国語のDVDカラオケ→10〜15Eur
・日本のアニメ音楽CD→9〜12Eur
・日本のアニメDVD→15〜20Eur
日本のアニメ音楽CDに記載されている製作会社で一番多かったのは、台湾のSM RECORDS LTD という会社。おそらく台湾における正規の製造販売権をもっているメーカーと思われる。只、本来は台湾国内の販売権しかないはずなのに、その商品がパリに輸出されているということになる。同メーカーが輸出しているのか、台湾国内の仕入れ店が並行でパリに輸出しているのかは不明。歌は日本語のオリジナル版。
ちなみに販売されていた日本のアニメ音楽CDは、らぶひな・犬夜叉・ONEPIECE・ハンターハンター・テニスの王子様・キャプテン翼・NARUTO・うる星やつら・気まぐれオレンジロード・めぞん一刻・不思議の海のナディア・あずまんが大王・らんま1/2・となりのトトロ・風の谷のナウシカ、聖闘士星矢、など。
DVD は、ヒカルの碁・ガラスの仮面・キャンディーキャンディー・スラムダンク・NARUTO・シティーハンター・ONEPIECE・るろうに剣心・ブラックジャック・マジンガーZ・ガンダムMS・ルパン三世・キン肉マン・鋼の錬金術師、など。これらのDVDは音声は日本語で中国語と英語の字幕付き。DVDの製作会社は価格表で隠れており、店頭では見れなかった。
日本アニメや他の一般的なDVD(欧米の映画など)を扱っている店舗での販売価格は
・欧米映画のDVD→30〜35Eur
・日本アニメのDVD→18〜25Eur
今回の視察や今までの関係者からの聞き取りでの感じでは、海賊版商品はアジア地区の製造地では膨大な数量かもしれないが、フランスのみを見た場合、海賊版を仕入れても販売箇所がまだ少なく(日本アニメ自体の需要がまだ少ない)、大量に輸入して大量に売りさばく、というところまではいっていないようだ。市中のマンガ店も、商品は直接日本から仕入れたり、台湾・ベトナムなどから仕入れたりして、自社店舗での販売、卸をやっていると考えられる。このような細い仕入れルートは10本あまりあるような感触。尚、これらの仕入れ商品が海賊版か否かは不明。この他にマンガ関連商品の輸入・卸専門の会社が一社あり、海賊版も扱っているという情報を入手したが、こちらは事務所だけで店舗がなく、会社の実態はまだ未確認。
DVD正規版権元、訴訟準備の通達
フランスのDVD正規製造元は、コミック本のフランス語版正規出版社が同一タイトルのDVDも版権を取得しているケースもあるが、コミック本の版権より価格やリスクが高いため、規模の大きな他の会社やDVD専門会社が版権を保持しているケースが多い。
翻訳出版権店舗販売のトンカムやテレビ局のTF1(AB VIDEOと共同制作) などもDVD を製作しているが、KAZE社とDybex社が圧倒的に多くのタイトル商品を製作している。又、ビデオ・DVDの大手販売店舗のMANGA
DISTRIBUTIONもDVD製作別会社を設立し(Declic Images社)、同社はセット販売を専門に製作している。多国語での日本アニメDVD製作会社はGAINAX社で、殆どの商品は音声を日本語、字幕を仏語・スペイン語・ポルトガル語などから選ぶ様式になっている。
日本マンガ専門店はパリで約15店舗ほどしかなく、上記のDeclicImages社は卸業もやっているため、各店舗の販売商品内容に詳しく、半年ほど前にパリのマンガ専門店4店舗に対し、不正DVD(海賊版)販売の訴訟を起こす用意があると通達を出した。
たとえ裁判で争ったとしても、店舗と版権社の資金力の違いで雇える弁護士の力も明らかに違うし、裁判費用や割かれる時間、そして何よりも、フランスでの正規商品の卸を断たれる可能性を考えると、海賊版商品販売はかなりリスキーである。これにより現在、パリのマンガ専門店では海賊版DVDの販売は減りつつある。(因みに、現在まで裁判にかけられ判決が出されるとこまでは行ってないので、フランスでどのように裁かれるかはまだ分からない)
海賊版DVDの実態
パリだけを見た場合、日本アニメのDVD、音楽CDの販売をしているのは約15店舗(1店舗の平均売り場面積は70u)。その面積の店舗でコミック本・フィギュア・雑貨と併せてDVD・CDを売っている。フランス全土でも、販売している店舗は約40店舗ほど。映画上映された作品のDVD販売箇所は、大小併せるとフランス国内で2000〜3000箇所はあると思われるので、例えば、フランスの映画館で上映された日本アニメはコピー商品の価値対象にはなり得ても、上映実績がないと需要は絞られた特定客市場になるため、海賊版の輸入はあったとしても極小な数量と思われる。
ある日本マンガ専門店で、海賊版と思われるDVDの安売りをしているの見つけ、見本としてDVD一枚を買った。「ルパン三世」のアニメDVDで値段は4.9Eur。店は「海賊版商品ではなく、在庫商品なので安くしている」と言っていた。しかし、音声は日本語で、英語の字幕の他に中国語の字幕も付いている。表装にはワンダーショウ株式会社と書いてあり、監督やあらすじ、スタッフ等も日本語表記のみ。表装の絵は明らかにカラーコピーと思われるもので、装丁の質も悪く、海賊版商品では、と思われる。
不正商品と言うと下の二つが挙げられるが、
@ 販売権を持った地域以外での販売。例えば、日本の店舗が正規メーカーから仕入れ、それを日本国内で販売するには一切問題はないが、その商品を国外へ輸出した場合。商品は正規の商品でも、その地での販売は不正商品となる。台湾で正規の版権をもとに製造し、欧州で販売した場合もこれに当たる。いわゆる並行商品。
A 製造権を無許可で使用、製造し、それを販売する場合。海賊版といわれるもの。
欧州では@の比率が高いように感じる。
最後に
非常に大まかにではあるが、「海賊版」と言われる、主にDVD商品についての実態調査を行ったわけだが、結果としては、DVDに関しては海賊版商品は想像よりは少ないし、店での販売も減りつつあるようだ、という現状が見えてきた。しかしこの調査も一部の現状しか見ていないので、また違う形で調査を行えば、新たな一面が見えてくるかもしれない。
海賊版はDVDに限らずフィギュアなどのグッズ関連にも存在する。こちらの現状はまだ未確認だ。パリ市内のあるマンガ店では、中国製品のグッズを大量に売っているらしいが、客の方は、海賊版と分かっていながらも、安いから、ということで買う者と、海賊版と分からずに正規品だと思って買う者とがいるようだ。日常に「正規品」に囲まれている日本人の目から見れば、明らかに品質の悪いコピー商品と分かっても、本物を知らない者から見れば、それ(商品)が本物か偽物か、区別するのは難しい。
「偽物」を取り締まると同時に、フランスのマンガファン達が「本物」に触れられる機会を、もっともっと増やしていくべきだと思う。
Ken