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プロフェッショナル

仏出版社に見る、マンガ出版状況一例

取材:デルクールDELCOURT出版社
制作編集者M.Frederic GUYADER
         2004年11月30日・12月15日

 デルクール社について
 オフィスはパリ市内。会社は約12年前に設立され、BDの出版から始まり現在は日本マンガの出版も行っている。マンガ出版においてはフランスの六大出版社のひとつ。出版内容は(制作本数)、BD(フランス・ベルギーマンガ)が70%、日本マンガ25%、アメコミ5%、の比率となっている。BDは1作家の出版が年間1冊、アメコミは古い古典作品を扱っているので同じく1作家で年間1〜2冊。対して日本のマンガは、2〜3ヶ月に1冊の割で出版するので上記のような比率となる。(手塚治虫作品などの古い作品は2ヶ月に1冊、現行作品が3ヶ月に1冊の割合)
 尚、デルクール社では毎年9月にパリ市内でBD・マンガイベント「Festval BD Delcourt‐Harajuku」を主催している。イベントでは
同社出版物の宣伝広告に加え、同人誌サークルやコスプレなども参加して行われる。参加者は約3000人。2005年から担当者が変わったが、今までどおりマンガファンの集まりとして継続していく予定。(当サイトでの関連ページ:イベントレポート写真

Q(EJC):日本の作品はどのような基準で選んでいるのですか?
GUYARD氏

A(GUYARD氏):私たちは6年ほど前から出版作品の選考を、信頼できるドミニック・ベレ氏(パリで最初に日本マンガの翻訳出版をした出版社兼店舗、トンカムの旧経営者)に一任しています。彼の選ぶ作品は際物や性的な作品ではなく、本格的なストーリー性の高さに重点をおいたもので、そのような作品を出版することで、デルクールの作品イメージは高められています。只、そのような作品は販売の面から多少難しい点もあるため、「フルーツバスケット」のように幅広い読者に受け容れられる作品も、男女の市場確保と販売バランスを考え選んでいます。
 フランスでは近年、マンガ消費者の年齢幅が多少上がり(年少者の消費者は底辺で広がってはいるが)、私たちはそれに合わせて、読者のターゲット層を比較的年齢が上の18〜25歳ぐらい、作品の違いが分かり始める年齢層に当てています。又、内容の重い軽いは別にして、欧州に旧来からあるアジア・日本への偏見を除き、「日本の心」の琴線を感じられる作品を選ぶようにしています。
 ヨーロッパ各国のマンガに対する嗜好傾向を見てみると、フランスやベルギーにはBDの歴史があり、イタリア、スペインにはその流れが薄いという傾向があります。 そのため、イタリア、スペインではストーリー性よりも絵のタッチや優しさを前面に出した作品が好まれ、フランス、ベルギーではシリアスなシナリオの作品が好まれる傾向があるようです。例えば、「ドラえもん」はスペインで非常に人気がありますが、おそらくフランス、ベルギーでは受け入れが難しいでしょう。勿論、ターゲット年齢層を低く設定すれば市場はあるかもしれませんが。

Q:日本マンガの出版社はフランスに何社ほどあるのでしょうか?
A:大小併せると現在約20社あり、殆どがパリ市内か近郊にオフィスを持っています。現在、1番出版数が多いのがKANAカナ社で、2位以下はGlenatグレナ、Pikaピカ、Delcourtデルクール、Asukaアスカ、Tonakamトンカムとなっており、この6社が現段階でのマンガ大手出版社といえます。

Q:マンガの仏語版制作の流れを教えてください
A:簡単な流れをいうと、 日本と版権交渉が終了後、日本の版権者(殆どが日本の出版社)から市販されているコミック本が6冊ほど送られてきます。その本を全ページ1枚ずつにバラしてスキャンをし、その後コンピュータで画像処理をして汚れなどをきれいにし、仏語用原稿を作成します。ただ、この方法だとどうしても印刷後の画
質も悪くなるし手間もかかるため、今までに日本の版権者(出版社)へオリジナルの送付を依頼したこともあるのですが、どの社からも「オリジナル原稿はどこかにいってしまった」などと言われ、日本で市販されているコミック本からのスキャンを指示されるのです。僅かながら、日本で高画質スキャンしそれを送ってくれる会社もあるのですが、その場合はその高い経費を請求される場合が多いため、現状はフランスでスキャンをしています。
 翻訳過程としては、
 1.オリジナルの日本語を約50人の一次翻訳者へ渡し、仏語(荒訳)に訳す。
 2.次翻訳者が仏語としてより自然な表現に直す。
 3.最終訳文が出来上がったら、それをぺ−ジ画面構成者へ渡す。
 4.画面構成者が噴出しの位置や大きさ、形を決め(基本的には原作に従う)、スキャンした保存画像に入れ込んで、仏語版の原画が出来上がる。
 という順です。カラー表紙は、以前は日本の原画をそのまま使用していましたが、段々と仏人の嗜好に合わせたオリジナルの画像に変わりつつあります。(販売箇所でのビジュアル的な差別化も意識している)
 私たちのオフィスの1階はグラフィックデザイン制作部で、マンガのカラー表紙のみでなく他の請負作業もやっており、半地下の作業場は翻訳、画面構成の外部委託者からの作業終了後の最終チェックを行うところとなっています。いわゆる、最終仕上げセンターの仕事場ですね。

Q:デルクール社出版の日本のマンガで一番の売れ筋は?
A:一番の売れ筋は「フルーツバスケット」。現在、毎号5万冊の製版をしていますが、2005年初頭からは毎号10万冊の製本を予定しています。 2番目が「NANA」、3番目は「軍鶏(シャモ)」ですね。

 現在までの出版作品一例を挙げると、「フルーツバスケット」、「NANA」、「ご近所物語」、「軍鶏(シャモ)」、「ピンポン」、「奇子」、「薩摩義士伝」、「BECK」、「トガリ」など約30作品出版しています。
 2005年の出版予定としては、3月以降、毎月6〜10冊の新刊マンガの出版を予定しています。今後の出版作品についてはまだ詳しくは発表できませんが、手塚治虫の作品数点の出版準備は既に始めています。

Q:日本の版権者への希望はありますか?
A:作家を大事に育てるのは大切なことだと思いますが、過度に閉鎖的であるのが私たちの悩みですね。フランスの出版社が日本の版権者(出版社)と版権契約後、フランスにおける同作品(作家)の販売展開を考えるのですが、作家への質問など、作家直接でも出版社経由でも一切の連絡のやり取りは拒否されます。私は15年ほど前から日本との連絡を行っていますが、今まで会えた作家は1人のみ。仏出版社側としては、日本で既に人気の作品を輸入してフランスで出版することにも興味はありますが、それと同時に、もっと連絡を密に取れて、一緒に作品を作っていける作家とも仕事をしたいという希望も持っているのです。

 最後に
 2004年12月に、フランスにおける日本マンガの毎月の出版タイトル数が100本を越えた。今後も市場は急カーブで伸び続けると想定される。フランスの市場は日本の数字に比べると程遠いものがあり、市場としては強大とは言えないが、フランスにおける市場拡大も視野に入れた、フランスサイドのパートナーと協力の思想をもった態勢を作れば、更なる拡大は可能と考える。

 

Ken

 

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