フランスのJ-Music市場は、ここ1年ほどで急激な伸びを示している。特にコンサートは、2005年の秋頃から、パリを中心に月に1回、多いと2〜3回、日本人アーティストのコンサートが行われている。アニメやマンガに比べれば、まだまだ少数派の市場ではあるが、好きなアーティストに対するファン意識や、コンサートやサイン会へ毎回訪れるなど、ファンの行動力と勢いが、アニメやマンガに比べて強くあるように感じる。
ファンの広がり方と情報収集
J-Musicファンはアニメ・マンガファンから流れてくる者が多く、アニメの主題歌などをきっかけに日本の音楽を聴くようになり、それが徐々に、JポップやJロックへと広がっていくケースが多い。情報の入手はインターネットが最も多く、きっかけは、ネットでたまたま見つけた、口コミで評判を聞いた、など様々だが、ネットの試聴で、曲が気に入ると、そのアーティストの他の曲も聴いてみたり、さらに詳しい情報を探したり、又は同系統の他のアーティストの曲も聴いてみたり、という風に、徐々に幅を広げていく。J-Musicを扱うサイトでファンなら誰でも知っている、というのがジェィ・ミュージック・ヨーロッパJmusicEuropa。フランス語を中心に、欧州12ヶ国語で対応、各アーティストの紹介、コンサート情報、CDの発売状況、ライブレポートなど、かなりの情報量を掲載している。
J-Musicという幅広いカテゴリー(アニメ主題歌は除く)の中で、最も人気が高い、ファンが熱いのは、「ヴィジュアル系」である。日本でも一時期人気を博していたが、この日本独特の「ヴィジュアル系」は、ヨーロッパではドイツが最もファンが多く(ゴシック系もファンが多い)、その次がフランス、さらには北欧にもファンの広がりが見える。逆に、イタリアやスペインなどの南の方は多少力が落ちるらしい。フランスでは、「ヴィジュアル系」という日本語がそのまま名詞として使われ、情報サイトや雑誌などでも「Visual-kei」などと書かれていたりする。
フランスで最も人気のあるヴィジュアル系アーティストは、Mana(Moi dix Mois)、それから日本的に言うと多少カテゴリーがずれるかもしれないが、Dir
en Grey、また、最も来欧の要望が多いのは、Gackt、L'Arc-en-Cielである。
コンサート
現在、コンサートを企画する組織はパリに6つ存在する。パリ・ヴィジュアル・プロッドParis
Visual Prod、サウンドリシアスSoundlicious、ノスフェアNo
Sphere、フリーウィルFree
Will、オンガクフランスOngaku
France、ジャパン・ヴァイブスJapan
Vibes、である。このうち、パリ・ヴィジュアル・プロッドとオンガクフランスがアソシエーション、その他は有限会社組織となっている。フリーウィルは、その名の通り、日本のフリーウィル社のパリ支部、ジャパンヴァイブスは雑誌出版社である。パリ・ヴィジュアル・プロッドはアニメ主題歌の歌手を含め、J-POP系コンサートの主催が比較的多く、ノスフェアは反対に、インディーズのヴィジュアルバンドのコンサートが多い。現在までにフランスで、フランス人を対象にしたコンサートを行った日本のミュージシャンは、BLOOD、deadman、D'espairsRay、Dir
en
Grey、Moi
dix Mois、Mucc、宇宙戦隊NOIZ、陰陽座、蜉蝣、Kokia、新居昭之など。ほとんどのアーティストが、既に複数回、パリでライブを行っている。コンサート入場料は25〜40ユーロくらいで、入場者数は300人〜500人ほどが常に集まる。その中で、2005年7月に行われたDir
en Greyのパリ、オランピア劇場でのコンサートは、2000人の観客が集まり話題になった。
コンサートはパリで行われることがほとんどで、時々ボルドーやマルセイユなどの地方でも行われる。また、ドイツとフランス、ベルギーとフランスなど、近隣諸国で2ヶ所、というパターンも多い。観客の年齢層は、アニメ主題歌やJポップ歌手で18〜30歳、ヴィジュアル・ロック
系のバンドで16〜24歳。ヴィジュアル系ファンは比較的年齢が若く、コンサートには黒を基調としたシャツ、ミニスカート、厚底靴など、ひと目で「ファン」だと分かる格好でやってくる子も多い。
当ユーロジャパンコミックでは、今年2006年2月に、前述のアソシエーション、オンガクフランスとの共催で、日本のインディーズロックバンド、宇宙戦隊NOIZのパリコンサートを主催した。それまで、ヨーロッパではほとんど無名に近かったNOIZだったが、当日、ライブ会場には約300人が集まり、開場18時のライブ会場に、朝10時から並ぶファンもいた。取材にはアニメやマンガ情報誌の他、フランスの一般ロック系雑誌や、ラジオ、テレビなども訪れ、3ヶ月後、パリのマンガイベントでは、NOIZメンバーのコスプレをしたファンも現れた(写真右)。
CD販売状況
J-MusicのCD販売は現在、Jミュージック・ディストリビューション社のみが輸入卸専門を行っており、前述のコンサート企画組織などは小口のCD販売を行っている。また、アニメDVD制作会社のカゼKAZE社が最近、音楽レーベル、ワサビWASABIを立ち上げた。ただ、CD販売に関しては、各社のサイトとマンガ店での販売が殆どで、一般のCD市場での卸や販売は殆ど行われていない。加えて、市場が小さい上に海賊版が多く、日本での新譜発売2〜3ヶ月後には、そのCDの海賊版がフランスの市場に出回っているのが現状である。一般のCD価格が20ユーロとすると、海賊版CDはその半額の10ユーロ以下。もちろん、CDケースの作りはオリジナルのものほど凝った作りではないし、一番簡単なプラスチックケース、又は紙の四角い箱型が主流だが、ジャケットデザインや音楽自体の質は変わらないので、安い海賊版が出回ると、客もどうしても安い方へ手が伸びてしまうらしい。これはDVDアニメにも言えることだが、ベースの時点で既に、日本のCDやDVDはフランスの一般市場よりも値段が高い為、価格競争ではかなりの苦戦を強いられる。まだ小規模の市場で販売を行っているため、卸屋も大量数を購入することができず、その結果、値段もそれほど安くすることもできない、そしてそのうちに海賊版が進出、といった具合である。ここはいかに、一般音楽市場への参入を果たし、市場販路を広げられるか、というのが焦点となってくる。小口のサイト販売や、マンガ店での販売だけでは、市場の伸びは弱い。コンサートばかり行っていても、肝心のCDが売れなければ、アーティストも辛くなってくる。今後のJ-Music市場の課題は、ここにある。
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