KAZEとアニメ市場
「私たちの会社は1993年設立しました。『KAZE』のブランドは、会社設立後1年ほどの準備期間を経て、立ち上げましたので、今年(2006年)で12年ほどになります。現在、社員は20人います。主な仕事は、日本アニメのDVD制作と卸販売です。日本の会社からアニメの版権を買い、翻訳・吹替えをして販売しています。
今までに出したDVDの数量ですか?正確には数えていませんが、時間に直すと大よそ500時間くらいになるでしょうか。作品タイトル数でいうと約50作品、商品点数にする(1作品につき3本のDVDが出ている場合、3本と数える)と200本ほどだと思います。年間の制作数は最初の頃より今の方が断然多いですし、年によっても違うので一概には言えませんが、1年間に10〜20本、時間にすると200時間分くらいの量を近年は出しています。
人気商品は、ロングセラーが『ロードス島戦記』と『ほたるの墓』ですね。また、最近の作品では、『APPLESEED』や『Monster』、『BECK』、『天上天下』などが売れています。『APPLESEED』に関しては、映画も公開されたので、それの相乗効果でDVDの販売も伸びました。やはり映画やテレビなどのメディアはDVD販売に大きな影響を与えますね。全体としては、2001年から毎年約30%の伸びを示しています。まずまず好調といったところでしょう。
作品の版権は、日本に行って直接交渉しています。また、ほとんどの作品について、DVDのみではなく、テレビ、映画の版権も一緒に買っています。DVDは自分達が制作・販売して、テレビや映画に関しては、それぞれの交渉担当会社に委託し、放映の交渉をします。一番身近な例が先に話した『APPLESEED』です。DVDの版権も映画の版権もKAZEが持っていて、DVDは自社で制作から販売までを行い、映画の方は他会社に委託して上映となりました。
KAZEの場合、DVD制作後の卸・流通業務も全て自分達で行っています。アニメの市場はもともとフランスにあった市場ではなく、新しくできた市場です。その為、既存の卸・流通経路では十分に市場を網羅できません。自分達で流通経路を把握し、拡大していく方が確実なのです。卸先は、最初の頃はマンガ専門店が主な販売先でした。その後フナックやヴァージンレコードの大型マルチメディア店に広がり、現在ようやくカルフールなどのハイパーマーケットにも卸先が拡大されました。カルフールのように、マンガもアニメも基本的には全く関係ない、いわゆる一般市場に売り場を持つのは非常に難しく、長い間苦労しました。
フランス以外の国でも、ベルギー、スイス、ドイツ、オーストリア、ポーランドは自社の流通経路を使って卸しています。また、イタリア、オランダ、スカンジナビア諸国では、各国の卸業者と契約し、そこが各店舗に納品しています。ただ、スペインに関してはまだ販路がありません。翻訳は基本的に各国語にしていますが、少数言語に関しては、英語の吹替えに字幕を付けています。
DVDの日本語をフランス語にする場合、マンガ出版社は外部の翻訳者に仕事を依頼しますが、私たちは社内に翻訳担当がいて、全て自社内で行っています。自社で管理することによって、外部に頼むよりも質の良い物ができると考えているからです。紙のマンガと違い、動画であるアニメは、その作品の『世界観』を伝えることがより重要であると思っています。その為、翻訳にもより気を使う必要があると意識しています。
アニメの市場というのは一種、特殊な市場です。私たちは10年以上、アニメ専門で行っていますから、市場やファンの心理も分かっていますが、いわゆる一般企業が片手間に入れる市場ではないと考えています。他の企業は軽く考えているようですが、それほど分かりやすいものではありません。例えば、2004年に『イノセンス』がフランスで上映されましたが、その時の宣伝ポスターをご覧になりましたか?あれは通常、アニメを全く扱わない会社が担当したもので、作品の長所を全く理解できておらず、アニメの場合はどのような絵柄を使ったらよいか、ファンの心理にどう訴えるか、構図やデザインも、市場を分かっていないものでした。非常に残念です。私たちならこういうデザインはしません。そのような例を見ていたので、『APPLESEED』上映の時は、宣伝ポスターのデザインも私たちが行ったのです。市場を知らない所に任せるのは良くないことです。」
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ずらりと並んだマスターテープ
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「MONSTER」のマスターテープ
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こちらはDVD版
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J-MUSICと今後
「KAZEでは、近年のJ-POPの人気と市場性を見て、音楽CDのレーベルも立ち上げました。『WASABIワサビ』というレーベルです。現在、アニメのサントラCD(スタジオジブリ、APPLESEED、NOIR、天上天下、.HACK//SIGNなど)を中心に、アニメタル、新居昭乃
、Sonyとの協力でJ-POPベストヒット(SIAM SHADE、JUDY AND MARY、T.M. Revolution、平井堅、CHEMISTRY、HYDEなど全15アーティストの曲を収録)などを出しています。ただ、フランスにおけるJ-Music市場はまだまだ小さく、アニメDVDのようには多くは売れません。現在、販売をしながら市場調査も平行して行っているのが現状です。例えば、コンサート会場でCDを販売した場合、来場客の15〜25%がCDを購入することなどが最近分かりました。
フランスで売れる条件としては、1.日本で既に売れているアーティストであること、2.アニメの主題歌を歌っていること、3.フランスでコンサートを行う、の3条件が大切です。WASABIで出すCDも、それらの条件を元に、フランスでの市場を見ながら、売れそうなアーティストを選んでいます。
現在の所、一番売れているCDは、やはり映画の影響が大きかった『APPLESEED』のサントラで、約2500枚です。それ以外のCDは、売れても数百枚、というのが今のJ-Musicの市場です。
音楽CDに関する現在の問題は、フナックやヴァージンレコードなどの大型マルチメディア店に、『J-MUSIC』というカテゴリーがないことです。この為、J-MusicのCDを置いてもらう場合、、グループの音楽内容によって、ロック、テクノ、メタル、世界の音楽、といった風に、あちこちのコーナーにバラバラに置かれてしまいます。これは、日本のCDを探しているお客さんにとっては、非常に探すのが大変で分かりづらいことです。アニメも、そのカテゴリーがない時は売り場がなくて大変でした。音楽も、『J-MUSIC』という一つのカテゴリーを作ることが、まず大切です。そこに、各日本人アーティストやグループ、アニメのサントラなどをまとめて置けばいいのです。もちろん、すぐ簡単にできることではありませんが、近いうちに実現できるように、頑張っていきます。」
KAZEオフィシャルサイト:http://www.kaze.fr/
(インタビュー:2006年9月)