昨年、初冬のことになりますが、フランスはパリにある吹替えスタジオの方とフランスの吹替え事情についてお話する機会に恵まれました。
・映画声優について
 声優を育てる学校はまずなく、始めから声優を志す人も少ないので、吹替えは俳優、特に舞台俳優が受け持つことが多いのが現状です。(近年では吹替え専門の人もいるようですが。)基本的にはオリジナルの声に近い人をキャスティングすることが第一。別の選択肢としては、フランス語版になった時に、画像から受ける印象と声が上手くマッチし、自然に聞こえるかどうかにも重点が置かれるようです。
 子供の声の吹替えに子供をキャスティングするのは、この国ではまず難しい。子供に対する労働法がとても厳しいので、使われることは少ないのだそうです。
 また、男女は分けて1人1役、群衆の声となると、1人複数役ということもあります。
 この俳優はこの声優が受け持つ、というのは決まっていませんが、無名時代に受け持った俳優が時を経て大俳優になる場合があります。そうすると、より頻繁に吹替えをしていた声優がおのずとフランス語版○○と観客の耳には定着するので、その俳優の吹替えには常にキャスティングされることになります。これは日本でも同じなのでしょうね。

・アニメ吹替え事情
 アニメの吹替えとなると、テレビでの放送がメインなので、映画の吹替えのように予算も時間もかけられません。コスト削減の傾向は、録音を物価の安い国で行うという選択肢を生みます。隣国ベルギーはもちろんのこと、フランス語圏であるチュニジア、モロッコで録音されることも珍しくはなくなってきました。ただ、まだ質は落ちるので、低価格だからといって、フランスでの吹替えがなくなるところまでは来ていないようです。
 映画館で上映される長編アニメは、予算もあり、事情が異なってくるので、有名俳優を声優として招いたりもします。
 
・台本翻訳について
 他言語からフランス語への下訳をし、チェック・校正はスタジオの翻訳主任が行うことが多いです。アニメの場合、同じ翻訳者にお願いすると、エピソードを重ねるに伴って、ボキャブラリーや言い回しが平坦になる可能性があるというデメリットがありますが、反対に、継続しているから分かるキャラクターの個性というのもあり、登場人物像が確立しているというメリットもあります。視聴者を飽きさせず、シリーズの安定感は失わない。2点が両立するように、翻訳者の変更具合の調整も必要になります。

・録音の方法
 基本的に1人ずつ録音作業が進みます。会話の場面で、掛け合いが多いと2人一緒に録音する場合もあります。
 声優はたいてい1週間前にオリジナル版映像を渡され、人物像などの準備をしておきます。フランス語版台本を渡されることはありません。当日、スタジオに入り、オリジナル版に字幕の付いた映像を見ます。ここで、初めてフランス語版の台詞を知るわけです。何回かの練習のあと、無音の映像を見ながら、画面下に現れる字幕のタミイングに従って録音することになります。台本は監督だけが持っているようです。

以上、フランスの録音・声優事情についての小話でした。
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